実践から学ぶ!リモートアジャイル開発のポイント

実践から学ぶ!リモートアジャイル開発のポイント

新型コロナウイルスの影響で、開発環境がリモートに切り替わった方も多いかと思います。リモート環境でどのように開発すれば良いのか、頭を悩ませていないでしょうか?

メンバーズエッジではエンジニア全員がリモートのチームでアジャイル開発をしていますが、他社さんがどのようにリモートで開発をしているのかにも興味があります。そこで、リモート環境でのアジャイル開発に知見がある永和システムマネジメントの岡島さんにウェビナーにご登壇いただき、リモートアジャイル開発のポイントについて教えていただきました。

登壇者プロフィール

株式会社永和システムマネジメント Agile Studio Fukui ディレクターの岡島 幸男さん。

金融機関向けの情報系システム開発、Web開発のアーキテクト、組込開発のマネジメントの経験を経て、現在はAgile Studio Fukuiにて、クラウド+アジャイルによる受託開発・教育事業を担当されています。著書に『ソフトウェア開発を成功させるチームビルディング』(ソフトバンククリエイティブ)。『受託開発の極意―変化はあなたから始まる。現場から学ぶ実践手法』(技術評論社)他。

Agile Studio Fukuiについて

永和システムマネジメントさんの福井にある拠点「Agile Studio Fukui」には60名ほどのエンジニアが在籍しており、リモートでアジャイル開発を行なっています。開発をチームで請け負うだけでなく、お客様の内製化や技術転換を支援するサービスを展開しています。

単なるオフィスとしてではなく、お客様とともにアジャイルを学ぶ、アジャイルについて語る場を設けたり、未来のエンジニアのためのハッカソンやAgile Japanなどのコミュニティのための場所でもあります。

今回は、このAgile Studio Fukuiでのリモート開発についてのお話を主にお伺いしました。

リモート開発 フォーメーションとノウハウ

ひとことにリモート開発と言っていますが、その状況にはいくつかパターンがあります。

リモート開発の3つのフォーメーション

リモートエンジニア

たとえば、POとチームがオフィスで働き1名だけリモートワークしているといったパターン。時折必要とされることがあり、徐々にこのパターンが増えてきました。

リモート拠点

POが東京にいて開発チームは全員福井、というパターン。Agile Studio Fukui設立当初はこのフォーメーションだけを想定していました。

全員リモート

POもエンジニアも全員がリモートワーク、というパターン。今回コロナにより強制的に切り替えが実施されたフォーメーションです。

岡島さんがそれぞれのフォーメーションの中で行なっている取り組みをいくつかご紹介します。

リモート開発の3つのノウハウ

ノウハウ1:傍らに写真

お客様(PO)だけが東京にいて開発チームは全員福井の拠点で開発しているという場合、ステークホルダー(お客様)にどんな人がいるのかよくわからないまま仕事を進めてしまうことになりがち。

PO含めお客様がそばにいないので、具体的に誰のためにプロダクトをつくっているのか、という意識が薄らぎます。結果的に、仕様提案にギャップが生じるなどの実害が生まれることも。

そこで、「一番困っている人」の写真をデスクの傍らのいつも見えるところに貼り付けて作業する、現場から生まれたアイディアです。助けるべきお客様の顔を見ることで、「この人のために頑張っているんだな」とモチベーションを保つことができます。面白い写真だったりすると、写真を題材に近くにいるメンバーとの会話が弾むことも。

ノウハウ2:リーダーから無礼講

「いかにお客様との垣根を取り払うか」というのは、リモートでなくても難しいですが、リモートだとさらに困難になってきます。発注側(POなど)と受託側(開発チームなど)で分かれて開発している場合、受託側のリーダーが過度に堅苦しい言葉遣いをしていたりすると、チーム内の自由なコミュニケーションが難しくなってきます。

そこで、受託側のリーダーが意図的に上下を意識させないような関係作りを率先して行ないます。早い段階からお客様を「様」ではなく「さん」付けに切り替えたり、お客様によってはニックネームで呼んでもOKなことも。受託側のリーダーが率先して行なうことで、ほかのメンバーも安心して活発なコミュニケーションをとることができるようになります。

ノウハウ3:リモートホワイトボード

ホワイトボードはアジャイル開発ではよく使うのですが、リモートアジャイル環境下では、実際のホワイトボードを使った対話ができないため、ぼんやりした(固まっていない)イメージの共有やそれを基にしたディスカッションがしづらいです。

そのため、リモートであってもホワイトボードの代替となるようなツールを活用しています。

Surface Hub や Google Jamboard などのデバイスを活用できればより良いが、ペンデバイス(ペンタブ、タッチペン)と手書き可能(手ブレ補正があると良い)なツール(Microsoft WhiteboardMicrosoft OneNote)を活用するだけでも、オンサイトでホワイトボードを使いながらディスカッションすることと同等の体験をすることが可能です。

また、おすすめのツールとしてMiro(デジタル化アナログツール)・Discord(チャットツールの延長線上で雑談が気軽にできるアプリ)も教えていただきました。

Miro

ホワイトボードを使わないとできないことを、オンライン上で実現するためのデジタル化アナログツール。みんなでボードにふせんを貼って情報を整理したり、マインドマップを作成してアイディアの整理をしたり。Miroを使えばPC上であってもアナログ・手作業感を演出することができます。Excelを使えば一瞬で終わるバーンダウンチャート作成をあえてMiroで作業することで、「チームの仕事」という実感をみんなで持つことができます。

朝会やふりかえりなど、すべてのイベントをボード上で完結させることで、自然にメンバーが集まる場所をオンライン上でもつくることができます。

Discord

アジャイル開発において雑談はとても重要です。チームに「雑談リーダー」がいると潤滑油になるので、年長者は率先するといいと思います。リモートチームでは雑談を意識して多めにしているメンバーも多いです。雑談の活性化に有効なツールDiscordについては、ぜひ永和システムマネジメントさんのYoutubeチャンネルをご覧ください。

変化に対応できるアジャイルな組織になるために

今回の新型コロナでは、大きな変化に対応しなければならなくなった組織も多いと思います。

永和システムマネジメントさんでは、緊急事態宣言の発令を受けて4月ごろからリモートへの切り替えを実施しました。

現状、90%以上の受託開発プロジェクトがリモート対応をしており、大きなトラブルもなく開発を進められています。比較的スムーズにフルリモートに移行できた理由について語っていただきました。

施策(ツールや制度)が必要な部分

  • クラウドをプラットフォームとした仕事環境
  • ビデオ会議やチャットなどのツールへの慣れ
  • 在宅勤務制度と、それを支援する機器購入に対する会社からの支援

永和システムマネジメントさんでは普段からAWS/GCP/G Suite/GitHub などを利用し、そもそもインターネットさえあればどこでも仕事ができる環境でした。Zoom/Hangout/Slack といったビデオ会議やチャットなどのツールにも慣れており、リモートで仕事をするための前提が整っていたとも言えます。

在宅勤務を会社として進めていくためには、制度はもちろん、在宅勤務の環境を整えるための機器購入に対する支援なども必要になってきます。

組織能力が必要な部分

続いて、ツールや制度では解決できない部分。ある意味組織の能力が必要とされる部分について語っていただきました。

  • イケてる働き方をパターンとして見出し共有できる

 Agile Studio Fukuiでは、のべ8名のメンバーの協力のもと、リモートでアジャイル開発するためのノウハウをパターン化してノウハウ集として文書化しています。

マネージャがやり方を指示したりマニュアルを作成するのではなく、メンバーからイケてる働き方のノウハウを見出して発信してもらい、自発的に社内に共有することが大切です。

  • 個人と組織の共生進化を良しとする文化

こういった社員の自発的な発信、共有を促すためには、組織の文化醸成も必要になります。

リモートアジャイル開発をやっていると、従来あった組織の階層が解体されていく感覚を味わいます。実際の指揮命令系統は変わらないのですが、自宅で一人で仕事をする環境になることで、階層の意識が非常に薄く感じられるようになってきます。

このような状況が続くと、従来の「組織が人を育てる」というあり方から、「組織と人が共に成長・変化する」あり方に変わっていくと考えられます。

岡島さんが個人的に最近いいなと思っているのが「ミトコンドリア式働き方」。

ミトコンドリアはあらゆる生物の細胞の中に存在する器官ですが、そこだけ違う遺伝子を持っており、もともとはまったく違う生物が入り込んで一体化したものと考えられています。生物学的には「共生進化」と言いますが、これがすごく個人と組織を想起させるのだとか。

ミトコンドリアの特徴として、細胞と一体化していること、細胞にエネルギーを供給すること、細胞の新陳代謝を促し改善や変革を促すこと、異なる遺伝子を持って独立していることがあげられます。

これをAgile Studio Fukuiの組織にあてはめてパターン化したものがこちらの図です。今回、大きな変化に対応できた理由として、もともと潜在的にこのような要素を持っていた組織であったということが大きいと岡島さんは語ります。

  • ビジョンの実体としてのアジャイル拠点

ここまで文化醸成の話をしましたが、そもそも文化を生み出すのは組織のビジョンであると岡島さんは思っています。Agile Studio Fukuiのビジョンは「共創のためのアジャイル拠点となる」こと。事業会社がいて、そこに対して受託開発会社が依頼を受けて納品するという従来の形ではなく、ユーザー企業がDXを進めていく中で、パートナー企業と一緒に開発を進める「アジャイル共創・共育開発」のための拠点をつくりたいという想いがこめられています。

新型コロナの影響で「共創アジャイル拠点」はどう変わるか

新型コロナによりAgile Studio Fukuiの根本理念が変わることはありませんが、違う形でアジャイル共創開発が進むのではないかと、岡島さんは語ります。

コロナ後は全員がリモートになるなどさらに分散が進むと思いますが、内製シフトが加速することにより開発に積極関与するユーザー企業が増えると考えています。

また、ベンダー間の情報共有も進み、競合でありながら協調し一緒に開発をするような動きも増えてくるのではないでしょうか。

組織の文化をそんなにすぐ変えられるのか?

Agile Studio Fukuiは構想から半年で実現しています。その後2年弱で会社のシンボル、イデア(理想形)にはなれたと感じています。物理拠点がつくれない場合でも、ビジョンはどんな会社でもつくることができます。

今は新型コロナの影響で「摩擦」が減っており、既存の制度やルールを変えやすいタイミングです。ウェビナーも多く開催されており情報も得やすくなっていますので、ぜひ取り組んでみていただきたいと思います。

おわりに

永和システムマネジメントさんはメンバーズエッジからすると競合ともいえるのですが、岡島さんもおっしゃられているように、今後は競合の垣根を越えてベンダー間の協業や情報共有が進んでいくのではないかと思います。

Agile Studio Fukuiにこめられたビジョンは非常に共感できるところも多く、リモート開発の取り組みは弊社としても参考になることばかりでした。

ぜひみなさんの組織でも、取り入れやすいところから取り入れてみてください。

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